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UEDEN次世代通勤列車試作車 UR-ICT100系

 中小私鉄を取り巻く環境はどんどん悪化しており、利益を少しでも確保させるために合理化を進め、また、その地域に密着したイベント、そこにしかないどこにもない「特長」を前面に展開している。UEDENでも早急に手を打とうということで何をするか話を進めた。
 合理化の面では、普通においては日中の2両編成や単行車にはすべてワンマン化を達成しており、地下鉄線にしても全車ワンマン化を達成した。また、保有車全てがVVVF・ベクトル制御で節電は完璧、回生ブレーキも全車備わっているので変電所も最小限に抑えられている。これ以上の合理化は無理とされた。
 では、「特長」を新たに作ってはどうか。SLを走らせようかという案が出たが、「今のダイヤでは不可能」という。トロッコ電車を走らせてはという案も、「120km/hで走ったら人が風圧で大変なことになる」ということで不可能になった。
 「昔ながらの列車ではなくて、どこにもまだ出ていない、マンガでよく描かれる『未来の電車』を今、出してはどうか」
 社長のこの声でICTプロジェクトが始まった。
 最新鋭のシステムを使って、構造も形も何もかもが違い、なおかつコストを大きく削減し、オーダーメイド製造を容易にできる、ゼロエミッションを目指したインフレーション・コミューター・トレイン「ICT」、そのシステムを上級の位置にした、コンフォート・エクスプレス・トレイン「CET」をUEDENの次世代車輌にすることとなった。

 

車体

 先頭車は15.5m、中間車は14.5m級の車体を採用した。1両あたりの長さを短くして、連接台車にかかる重量を少なくしている。3両ユニットであるが、従来車の20m級車2両と同程度(ICTは45.5m)なのでワンマン運転が可能である。また、持久性と走行性を比較するため、3両2本のうち、天神向き先頭車2両をステンレス、そのほかの4両をアルミで作った。いずれもダブルスキン構体としている。
 ドアは、1両あたり片側2ドアとしている。開閉方法に関しては、乗降のしやすさ、メンテナンスのしやすさをテスト・比較するため、先頭車をスイングプラグドア、中間車を従来の戸袋ドアとした。

 

走行機器

 連接台車は在来車輌のボルスタレス台車を改良したものを使用している。車体と車体をつなぎ、連接器の役目をする「牽引器」に台車を2点支持方式で取り付けている。
 車体長が短いのでレールのきしみ音は低くなるが、UEDEN初の防音車輪を使用している。空気バネはダイヤフラム式であるが連接台車なのでボルスタアンカが取り付けられてないため、横揺れに特化した横震吸収タイプである。
 制御方式は、IGBT素子を使用したVVVFインバータ+PWMコンバータ制御である。加速には3レベル変圧自動切換制御とし、ブレーキには電気指令式電空併用ブレーキを採用。また、くまもと菊吉線走行に対応するため、電空ブレンディング自動制御の「ACB」を設けた。補助電源にSIVを用いて小型化。インバータとACB、SIVを機器箱に全て収めて一体化した。モーターは車軸に直接取りつけたDDMを採用して伝達率の向上、部品削減を図った。MT比は1:1になった。

 

客車

 全車に欧米の考えを取り入れたユニバーサルデザインが大きな特長。クロスシートの先頭車は出入台にスモークガラスの仕切りを取り付けて「半デッキ」を作った。つり革は半デッキにのみ取り付けられた。つり革デザインも一新され、完全三角形に固めのスポンジを巻きつけて握りやすくした。クロスシートも新デザインで、転換シートではUEDEN初のパソコン対応大型テーブルを備えた。接続すれば電源はもちろん、LANと情報アンテナの装備で可能になったインターネット接続ができる。逆に列車内からメールも送受信することができる。
 中間者はロングシートになっていて、仕切りがないのでデッキはない。つり革は天井に2列に並んでいる。ロングシートはUEDENではあまり実績がないのでUR-KR300(久留米地下鉄)と同じものを使った。先頭車から乗務員の視認性をよくするため、トイレは車両中間に設置されている。
 ICTのもうひとつの特長として情報の多化がある。前述のように車両屋根上部にLANと情報アンテナを取り付けている。空中に飛び交うTV電波やAM・FM電波を情報アンテナで自動キャッチし、LAN内で電波の内容を読み取って自動的に画面構成して、客室内の液晶画面に表示する方法。画面は12秒おきに切り替わり、15個の情報を1サイクルとして、3分で最初の画面に戻る。この情報画面パネルは、先頭車はスモークガラスのしきりに、中間車はドア上部や窓の上部に取り付けた。このほか、次駅停車案内をドア上部の天井に枕木方向に設置した。ただし、1000番台は車内収ワンマン使用で運賃表示板の視認性を良くするため、乗務員室直後のドア上部にはとりつけてない。
 連結部の貫通路は車両1編成の一体化をするため広くした。

 

運転室

 運転室をバックアップするため、デジタル化をはかっている。速度計、圧力計、電圧計などなど、計器類は全て、液晶ディスプレイで表示し、部品点数を減らしてすっきりさせた。
 従来、レールに流れる信号電気をCTCセンターで受信して列車の位置を常時確認していたが、この信号電流を列車自体でも受信して、次駅までの距離をモニターに表示できるようにした。
 時間表も液晶ディスプレイで、CD-ROMをセットすれば時間表を表示するだけでなく、車外や車内の行先・種別表示も自動表示できる。
 運転台右側にはTVモニターを4台設けている。次駅までの距離が0m(±3m)を列車が感知すると、駅のホームカメラと各車1台ずつのワイヤレスカメラの電波を受信して最高4台分を画面表示する。乗務員はそれを見てドアの扱いをする。ワンマン運転の場合は車内のワイヤレスカメラ3台+ホームカメラ1台、ツーマン運転の場合、3両の場合はホームカメラ1台、6両の場合はホームカメラ2台のみ表示する。

 

 ICTは久留米運転区のベースに入念な試験を重ねていき、年内に全線を走行する予定。7月からは豊予線(現在のほうよ海道線)に入線し、ICT路線第1号線として各データを集めることになっている。また、次世代特急車CETは8月に出る予定。

この記事は2002年に書かれたものを再編集したものです。